NFLは第一週の試合が行われた。16試合のうちアウェイが11勝と実に派手な開幕。その中でNew Englandはどうにか勝利を得ることができた。試合映像は見ていないのだが、スタッツから何が分かるかを調べてみよう。
まずNew Englandのランディフェンス。不安なのは10ヤード超のゲインを許した比率が12.5%に達したことだ。New Englandは過去3年、この数値が10%以上になったことはなく、必ずリーグトップに位置していた。しかしこの試合ではビッグゲインを奪われることが多く、それだけランディフェンスがうまく動いていないことがうかがえる。一方、相手のランをゼロまたはマイナスに抑えた比率は29.2%。こちらは過去の数値に比べて妙に高い。New Englandらしからぬディフェンスが展開されたことが分かる。
次にパスディフェンスについてだが、こちらはそれほど悪くない。15回のパス成功のうちディープゾーンに通されたのは実はたった2回。Losmanが23回のパス試投のうち20回をショートに投げるなど極端に偏ったパス攻撃をした影響もあるが、それも昨シーズンのDBより相手に敬意を払ってもらっている証しだと考えれば悪くない。単にBuffaloのOCがLosmanのロングパス能力を信用していなかっただけ、という可能性もあるので、あまり喜ぶとまずいのだが。
敢えてパスディフェンスの問題を探すなら、ショートパスから10ヤード超稼がれたプレイが6回(ショートパス成功13回中の46%)もあったこと。YACをかなり許した訳だが、一方で20ヤード超のビッグプレイを許していないことも踏まえるならそれほど悪くはない(New Englandはこの試合で20ヤード超のパスを3回成功している)。相手がBuffaloだけに額面通り受け取っていいのかどうか不安だが、昨シーズンに比べればパスディフェンスが向上している可能性は高そうだ。
次にオフェンスだが、まずランについてはほとんど問題はない。41回もキャリーしただけでもお見事だし、ニーダウンを除いて38回中22回で4ヤード以上ゲイン(Buffaloは24回中11回)したのだから完全にグラウンドゲームを支配していたと言える。むしろBuffaloのランディフェンスに何か問題があると考えた方がいいだろう。
そして問題のパスオフェンス。試合映像を見ていないので判断しづらいが、どうやら試合序盤はパスプロテクションが全然機能していなかったらしい。実際、この試合でBradyが受けたサック(3回)は全て前半に記録されている。試合経過に伴いパスプロテクションが向上したのは、コーチングスタッフが機能していることを示す証拠だろう。
Bradyはこの事態にどう対応したのだろうか。彼が前半に試みた11回のパスのうち実に9回がショートゾーンへ投げたもの。ディープはたった2回で成功は0回だ。逆にパスプロテクションが機能していた後半はショートが7回、ディープが5回(成功4回)と深いゾーンに投げ込む比率が圧倒的に高まった。状況の変化に応じて臨機応変にパスを投げていたことがうかがえる。また、試合全体のパス成功率は低い(47.8%)ものの、特に悪かったのは前半(27.3%)。後半だけ見ると66.7%と高い成功率を維持しており、決して悪くはない。
問題はレシーバーだ。Givensが去り、Branchがホールドアウトしている状態で残りのレシーバーたちはどんな成績を残したのだろうか。一般的なスタッツでは以下のようになる。
Watson 3 50
Caldwell 2 33
Dillon 2 22
Brown 2 18
Graham 1 23
Faulk 1 17
これだけ見るとWatsonが奮闘したように見えるのだが、果たしてそうか。play-by-playには失敗したパスが誰に向けて投げられたかも記してある。そこからパス成功率でなく「レシーブ成功率」を見てみよう。すると以下のような数字が出てくる。
Dillon 100.0
Brown 66.7
Caldwell 50.0
Faulk 50.0
Watson 42.9
Graham 33.3
Maroney 0.0
昨シーズン85%のレシーブ率を記録したDillon、同66%のBrownは期待通りの活躍だが、Watsonは正直不確実性が高すぎる。Watsonがレシーブ失敗した4回のうち3回がショートパスだったのも問題。ディープならレシーブ率が低いのも仕方がないが、ショートで5割に満たないレシーブ率というのではエースレシーバーとしては落第だろう。現時点でWatsonがBranch(昨シーズンは62%のレシーブ率)の代役を務められるかどうか不安が残る。
もちろん、パス失敗の全責任がQBにないのと同様、レシーブ失敗の全責任がレシーバーにある訳ではないし、母数が少なすぎる現段階で判断を下すのはまだ早い。そもそも私は試合の映像を見ていないので、パス失敗の原因についても何も断言はできない。それでも、現時点でWatsonがいるからBranchは不要という理屈が成り立たないのは確かだ。そのBranchはSeattleとのトレード決定。となるとJacksonのデビューに期待がかかる。
結局、初戦を見る限り昨シーズン後半に比べメンバーが格落ちのILBに問題があるランディフェンスと、移籍などで完全な人材不足に陥っているレシーバーを抱えるパスオフェンスが問題という、予想通りの展開になった。この問題はすぐには解決しないだろう。
次週は@New York Jets。Penningtonは33試投の24成功、319ヤードゲインという記録を残したが、試投のうち28回はショートとやはり肩の問題は隠せない模様だ。しかしロングは5回のうち4回成功している。Buffalo戦では破綻を見せなかったNew Englandのパスディフェンスが本物かどうかを調べるうえでちょうどいい相手かもしれない。一方、New Yorkのディフェンスの実力は正直よく分からない。とりあえず、New Englandのパスプロテクションとレシーバーに注目しておきたい。
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