対象としたのは1990年から2007年の間にプロになったQB。プロに入って何年くらい経てば実力通りの成績を出せるようになるかを調べるため、1年目、最初の2年、最初の3年の成績と、キャリア通算(現役選手の場合は2010年第14週まで)成績との相関性を調べる。プレイ回数が少なすぎる選手を除くため、1年目については最低100試投、最初の2年は200試投、3年は300試投、キャリア通算では500試投以上の選手のみを対象とした。 1年目に100試投以上した選手で、なおかつキャリア通算500試投を超えている選手は43人で、双方の相関係数は0.504。そこそこ相関しているがそれほど強い訳でもない。1年目の成績からある程度QBの将来を見通すことができるとは言えるものの、あまり早々に判断してしまうと時にしっぺ返しを食らう可能性があるような微妙な数字だ。 1年目ANY/Aと通算との差が最も大きいのはDonovan McNabb。最初の年は2.41だったが、キャリア通算では5.91とリーグ平均を上回る水準まで成長した。逆にマイナス方向で差が大きいのはMarc Bulger。彼の場合は1年目の成績があまりに良すぎた(7.67)ため、通算でリーグ平均並み(5.61)を確保しているにもかかわらず大幅な下方修正になってしまった。極端に良すぎる成績や悪すぎる成績はあまり長続きしないってことだろう。 最初の2年間に200試投以上、通算で500試投以上のQBは63人いる。ここでの相関係数は0.738。強い相関がある。NFLでは2年目に成長したQBの方が将来に期待できるという言説があるが、それを裏付けるようなデータだ。2年間見ればそのQBのプロとしての能力は大体見定められるってことだろう。もちろん例外はあり、例えばKyle Ortonは最初の2年に3.56だったANY/Aが通算では5.43まで上がっているし、逆に2年目が異常に良すぎたElvis Grbac(7.08)は最終的に5.52まで低下している。 3年間に300試投以上、通算500試投以上のQBは78人。相関係数は0.771と少し上昇するが2年間と比べてそれほど大きい変化ではない。注目点があるとしたら、最初の3年で残した成績を大きく上回るQBがほとんどいないのに対し、下回るQBは珍しくないこと。2年目まではむしろ将来に上昇する余地を残していたQBの方が多かったのに対し、3年間やるとほぼその選手の上限が見えてくると考えてよさそうだ(本当に目立つ例外はBreesしかない)。 結論。平均を下回るQBは2年目までで見切ってほぼ問題なさそうだ。3年間プレイを見守るのは平均以上の成績を残しているQBだけであり、そして3年目まででその選手の上限は大体見えてくる。その上限に満足がいかないなら平均以上のQBでも4年目には放り出して新しいQBを探しに行く必要があるだろう。6年目になってもいまだにAlex Smithを切れないSan Franciscoは無駄に問題を長引かせているだけに思える。
以上を踏まえ、若手QBの中でも成績が今一つな選手たちを取り上げて見よう。1年目のClausen、2年目のSanchez、3年目のHenneはそれぞれ過去のQBたちの誰と似ているのか、ANY/Aの数値が近い選手を並べてみる。まずはClausenで、以下の表は左から名前、1年目のANY/A、通算ANY/Aだ。
Jimmy Clausen 3.94 3.94 Tim Couch 3.96 5.48 Joey Harrington 3.98 4.39 Rick Mirer 3.89 3.80 Charlie Frye 3.88 3.58 Kyle Boller 3.75 4.13 Chris Weinke 3.74 3.62 Derek Anderson 3.74 4.79 Mike McMahon 4.15 3.31 Jeff George 4.22 5.30 Bruce Gradkowski 3.65 3.99
まだ1年目、つまり通算成績との相関係数が強くない時点なので、見切ってしまうには早いのは確か。だが、それにしても並んでいる名前を見ると将来に絶望したくなるラインナップであることは間違いない。次にSanchezと2年間の成績が似ている選手たち。
Mark Sanchez 4.73 4.73 Tony Banks 4.75 4.70 Jake Plummer 4.70 5.07 Chris Simms 4.69 3.90 Mark Brunell 4.82 5.66 Shaun King 4.92 4.51 Drew Bledsoe 4.94 5.18 Craig Erickson 4.51 5.28 Matt Leinart 4.97 4.91 Quincy Carter 4.48 4.68 Vince Young 4.47 5.24
見ての通り、最終的に平均を上回る選手に育ったのはBrunellくらいしかいない。半分はANY/Aが5ヤードにも届かないようなレベルであり、スーパーボウルまでたどり着けた選手もBledsoeのみ。先発と控えの境界線上をさまよっていたような選手たちの名が目立つ。そしてHenneと3年間の成績。
Chad Henne 5.03 5.03 Rick Mirer 5.00 3.80 Jake Plummer 5.08 5.07 Kerry Collins 4.98 5.15 Vince Young 5.11 5.24 Drew Bledsoe 5.13 5.18 Billy Joe Hobert 4.92 4.50 Kyle Orton 5.15 5.43 Todd Collins 5.17 4.51 Kyle Boller 4.89 4.13 John Friesz 5.19 5.02
ここではBledsoeと並んでKerry Collinsがスーパーボウルに出ている。しかし全体的には並かそれ以下の選手が中心だ。PlummerやOrtonのようにチームを変えて花開いた選手もいるので、Henne自身も他のチームへ移る選択肢を考えるべき時が迫っているのかもしれない。 実際にはNFLの各チームはQBに関しては割と我慢強いところが多いので、彼ら3人も早々にクビになる可能性はあまり高くないだろう。でも、我慢しすぎに見えるチームも多い。QBについては案外「○○・マスト・ゴー」と叫ぶ短気なファンの言い分の方が正しいのかもしれない。
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