投入失敗

 ナポレオニック関連の更新などに追われている間にあかつきの金星軌道投入が失敗に終わった。惑星軌道に投入するのはのぞみの時以来のチャレンジだったが、結局前回と同じ結果に。もっとも前回はそもそも火星に近づくだけで大変な苦労をしていたが、今回は近づくまでは極めて順調に推移していた模様で、最後になって急転直下の展開だった。
 これまで報道されている範囲では、燃料タンクの圧力が想定より低下していたほか、途中で加速度が急速に低下し機体が姿勢を崩していたことが分かったという("http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1012/10/news095.html"参照)。JAXAはエンジンの地上実験を行って原因究明を図るそうだ。同時に金星を撮影した写真も公表しており、観測系の機器には異常がない様子が窺える。問題はエンジン部分だろう。
 今回使われているのは国産のセラミックスラスタ。7月に実証実験を行った際には成功しており"http://www.jaxa.jp/press/2010/07/20100706_akatsuki_j.html"、金星軌道投入まではさしたるトラブルもなく運用できていたようだ。とはいえこの時は噴射時間13秒とかなり短く、より長時間動かした場合の問題点はその時点では判明していなかったのだろう。地上実験で原因が分かればいいが、そもそも地上実験自体は過去にもやっているだろうし、果たして上手く行くかどうかは微妙な感じ。それに、再現が上手くいった結果、6年後の金星投入は不可能という結論が出る可能性もある。
 また、再投入を試みるメドが立ったとしても、そもそもあかつきは観測期間2年程度を想定していたわけで、6年も後から改めて長期の観測をするのはおそらく困難。はやぶさのように戻ってくれば終わりなら分かり易いが、あかつきの場合は観測をできるだけ長く続ける方が例えば金星の雷発見などの実績を上げる確率も高まるだけに、今回の投入失敗の影響はかなり大きい。JAXAにとって華々しい成功が相次いだ2010年だが、最後に苦い思いを味わうことになった。
 とはいえ宇宙開発なんてどの国も失敗の歴史を積み重ねてきたのは事実。2回程度の惑星軌道投入失敗を別に恥じる必要はないだろう。重要なのは問題点を洗い出して次に生かすこと。その意味では「トラブルの原因が分からなかった」という結論になるのがおそらく最も拙い。まあ時間はたっぷりあるので、JAXAはじっくりと問題点の解明に努めてほしい。その間、あかつきと例のバーチャルアイドル"http://www.crypton.co.jp/mp/pages/prod/vocaloid/cv01.jsp"には宇宙を漂ってもらうことにしよう。
 
 ついでにそのバーチャルアイドル、宇宙では行き先の見えないままさまよっている状態だが、地上では脇目もふらず驀進中だ。来年の3月にもまたライブをやることが決定"http://5pb.jp/mikupa/"したほか、メキシコでは何やら週刊誌の表紙を飾り"http://www.eluniversal.com.mx/graficos/dia7/"、ロシアでもテレビデビュー"http://www.youtube.com/watch?v=bALxxumn8Hw"。ライブの話は海外の関連サイト("http://www.vocaloidism.com/2010/12/09/hatsune-miku-2011-live-concert-in-tokyo/"など)でも早速取り上げられており、反響の大きさが窺える。また、Vocaloidを中心とした地上波番組"http://vocarevo.com/index.html"も年明けに放送される。
 こちら"http://togetter.com/li/76710"にはクリプトン社長らが出席したセミナーの内容をツイートしたものがまとめられている。面白いのは、海外の書き込みでもよく見られるProsumerという言葉(社長も口にしていたらしい)を生み出したのがトフラーだってことか。このあたりもサイバーパンクとつながりがある、と言えなくもない。何にせよ未来に生きているということが実感できる現象だ。
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