祖国は危機にあり(La patrie en danger) 関連blog
1794年夏秋・イタリア 1
2022
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06
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30
ナポレオニック
1794年の春季戦役が終わった後の動きについて、セント=ヘレナのナポレオンは簡単な両軍の状況を解説した後でいきなり9月の戦役に話を飛ばしている(Mémoires pour servir à l'histoire de France, Tome Troisième, p70-72)。その間に起きた出来事としては、アルプス方面軍とイタリア方面軍が「コルマールで会議を開いた」件に触れている程度で、両軍はアルプスを挟んで静かに向かい合っていたかのように見える。 そして9月...
科学の低迷
2022
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06
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28
その他
成長をもたらすのはイノベーションではないか、という話を前にした。イノベーションはエリートがコントロールできるものではなく、従って成長戦略なるものを描いたとしても、他人の物真似を除いてそれを実現できる保証はない。一方、戦略の有無とは無関係にイノベーションが起きれば限界利益が急増し、成長を達成することができる。成長は民主主義にも影響を及ぼすだけに、イノベーションが起きているかどうかは今後の社会の在り...
アルベド
2022
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06
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26
その他
架空世界絡みについて色々とアップしているこちらのYouTubeチャンネルがなかなか興味深い。今回はその中でもアルベドについて紹介しているこちらの動画に注目しよう。地球の温度がどのように決まっているかを知るうえで参考になる。 動画の冒頭では惑星の気温を決める方程式が出てくる。惑星の気温(ケルビン)は、「恒星の光度」の4分の1乗を、「惑星と恒星の距離」の2分の1乗で割った数字がそれだ。ただしこの数式は実は...
農業社会の人口増減
2022
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06
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24
その他
以前、こちらのエントリーとそのコメント欄で、欧州で農業が始まった頃に見られた人口の増加と減少(boom and bust)の理由について色々な見解を紹介した。Turchin的な永年サイクルが働いたのか、マルサスのような人口密度の上昇にともなう成長の限界か、それとも土壌の疲弊(養分の枯渇)という形で収穫逓減が発生したのかなど、色々な理由が考えられるところだが、そこに別の切り口で行われた研究が加わった。Explaining popul...
西アフリカの火器 下
2022
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06
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22
火薬・軍事革命
これまでFirearms and Warfare on the Gold and Slave Coasts from the Sixteenth to the Nineteenth Centuriesを使って西アフリカの黄金海岸と奴隷海岸における火器の受容史をたどってきた。最初に火器を持つ欧州勢と彼らが接触したのは15世紀後半、16世紀末あたりからは少しずつ火器の普及が始まり、17世紀後半からこの地への輸出が大幅に増加。それに合わせるように地元勢力も火器を使った戦争を当たり前のように行うようにな...
西アフリカの火器 中
2022
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06
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20
火薬・軍事革命
西アフリカの黄金海岸、奴隷海岸における火器の歴史をまとめたFirearms and Warfare on the Gold and Slave Coasts from the Sixteenth to the Nineteenth Centuriesについての話、続きだ。 個人的な推測だが、17世紀後半から西アフリカへの火器の輸出が増えた理由は、もしかしたら欧州の「永年サイクル」のせいかもしれない。危機の17世紀において、英国では世紀の半ばに三王国戦争が、フランスでも同時期にフロンドの乱が、ド...
西アフリカの火器 上
2022
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06
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18
火薬・軍事革命
サブサハラ・アフリカの火器史について、以前こちらで16~17世紀のベニン王国について少し触れたことがある。ベニン王国は現在のベナン共和国とは歴史的に何の関係もなく、今のナイジェリアにあるベニン・シティ付近にあった国家だ。 このベニン王国の西側にあったのが、欧州諸国から黄金海岸や奴隷海岸と呼ばれていた地域だ。黄金海岸はギニア湾に面する現在のガーナにほぼ相当する地域で、名前の通り黄金を産出する地域として...
ロシアのエリート調査
2022
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06
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17
ウクライナ戦争
ロシアの金持ちの出国が加速しているという報道があった。資産100万ドル以上を持っている人々がネットでどのくらい流出しているかを調べたデータによると、Covid-19以前の2019年のロシアは5500人の流出だったが、2022年には1万5000人にまで増える見通しだそうだ。もちろん西側の経済制裁などが背景にあるのだろうが、この数はロシアのミリオネア全体の15%に達するという。 調査担当者によると「歴史上で大きな国が崩壊する時...
家父長制史 下
2022
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06
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16
その他
家父長制について論じているこちらのエントリーについての続き。家父長制の大きな波をもたらした3つ目の要因とされているのがイスラムだ。世代間の協力を促進するために血統が優遇されるようになり、そうやって密接に結びついた父系の血族関係が名誉を生んだ。その血族の協力と男性の名誉、そして結婚を通じた同盟関係を維持するためにとられた策が、男性による女性のセクシャリティのコントロールだった、とblogの筆者は指摘し...
家父長制史 上
2022
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06
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14
その他
以前こちらのエントリーで道徳的な神に関するツイートを紹介したことがある。そのツイートの主が先だって、「家父長制の1万年」と題したblogを書いていた。ツイートの時点では家父長制的なユーラシアで大きな神が生まれたことが、そうした道徳的な神の性格を規定したのではないかとの見方を述べる一方で、まだ論拠は弱いとも記していた。その後で本人は家父長制の起源に関する色々な仮説を調べ、そのうえで家父長制がどう生まれ...
弱者の戦略
2022
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06
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13
NFL
6月はNFLで最もニュースの少ない月だ。5月まではドラフト後の動きが色々とあり、7月の途中からはキャンプが始まる。つまり今が一番オフらしい時期であり、だから大本営にもあまりニュースらしいニュースは載っていない。 その中で割と動きを見せているのがSuper Bowl ChampのRamsだ。春にStaffordと4年160ミリオンの契約延長を行なっていた彼らだが、6月に入ってDonaldとの契約を見直してQB以外では最高額となる3年95ミリ...
テュークスベリーの戦い
2022
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06
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12
その他
ばら戦争中の1471年に起きたテュークスベリーの戦いについて、日本語wikipediaに奇妙な記述を見つけた。ランカスター軍が「弟グロスター公リチャード(後の国王リチャード3世)によって近くの森に密かに配置されていた騎兵200が自軍の側面を充分攻撃できる位置に布陣してしまった」という部分だ。どこが奇妙なのかというと、英語wikipediaと比較すれば分かる。そちらによると左翼の森を占拠すべく「200人の騎乗した槍兵に命じ」...
ロシアの誤算
2022
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06
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11
ウクライナ戦争
ロシアのウクライナ侵攻は彼らにとって誤算ばかりのようだ。もう6月になるというのにいまだに2月の侵攻開始時に着用していた冬服のままだそうで、兵は暑さと水不足に悩まされているという。独ソ戦のモスクワ攻撃時にドイツ兵がろくな冬服もないまま戦わされたという話があったが、それと逆の事態が引き起こされているらしい。 今となってはそもそもウクライナ侵攻を決めたこと自体が誤算だったのだろう。ただそうした誤算をし...
ササン朝の家族
2022
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06
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10
その他
以前、こちらで現在と歴史上の内婚制についてちょっと触れたことがある。西アジアから東地中海にかけていとこ婚の比率が高いこと、過去の歴史においてはエジプトやペルシャで最近親婚が見られたこと、でもその理由はよくわからないことなどに言及した。とりあえず言えそうなのは宗教よりも慣習の影響が強そう(だからこちらで紹介した論文には違和感がある)な点くらいだ。 実際問題、昔の西アジアでは婚姻についての制限が少な...
軍事教育の懸念
2022
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06
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09
ウクライナ戦争
ロシアのウクライナ侵攻によって、昔ながらの大規模な正規戦が再び戦われるようになったとの意見をあちこちで見かける。少し前までは非正規戦やサイバー戦、情報戦を組み込んだハイブリッド戦争や対テロ作戦、あるいはアルメニアとアゼルバイジャンの戦争のような限定的な紛争はあちこちで行われていたが、これだけ大規模な正規戦が行われたのはおそらく第二次大戦以来だ。こちらでも書いた通り、実は各国とも正規戦への対応準備...
赤道の乾燥帯
2022
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06
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08
その他
歴史に環境が与える影響について調べているうちに、ケッペンの気候区分で気になるところが出てきた。赤道のすぐそばにいくつか存在する乾燥帯(砂漠やステップ)だ。東アジアにいると赤道直下は熱帯雨林が当たり前という感覚になるし、実際アジアの赤道直下(インドネシアやマレー半島、フィリピン南部など)はその大半が熱帯雨林(Af)となっている。 だが気候区分を見る限り、赤道直下が常に大雨というわけではない。例えば南...
戦争ゲーム2回目
2022
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06
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07
ウクライナ戦争
以前こちらでロシアのウクライナ侵攻前に米海兵隊大学(Marine Corps University)で行われたウクライナ戦争の、またこちらでは米マスコミがシンクタンクの協力を得て実施した台湾への中国侵攻のウォーゲームについて紹介した。それぞれなかなか興味深い結果を示していたが、実は今から2ヶ月以上前に海兵隊大学校(Marine Corps War College)などがウクライナ戦争についてより長いタイムスパンでのウォーゲームを別途実施して...
ワーテルローと漫画
2022
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06
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06
ナポレオニック
ものすごく久しぶりになるが、ナポレオン漫画の最新号掲載分について取り上げたい。いよいよワーテルロー戦役が始まるところであり、読んでいていくつか言いたいことが出てきたためだ。それにしてもずっと昔に「ワーテルローまでたどり着くのは不可能じゃないか」みたいなことを書いていたのが、本当にワーテルローまで到着する時が来るとはね。思えば遠くへ来たもんだ。 また事前に言っておくが、漫画自体はフィクションなので...
銀英伝のサイクル
2022
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06
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04
その他
最近、銀河英雄伝説絡みのこんなツイートまとめがそこそこ話題になっていた。もちろんフィクションをどう楽しむかは個々人の自由であり、登場人物を巡るこういうやり取りも楽しみ方の1つだろう。面白いのは、銀英伝を架空歴史小説と考えた場合、個別の登場人物の性格に注目が集まるあたりが実に英雄史観っぽい点だ。ま、そもそも銀英伝自体が(題名にある通り)「英雄」史観に基づいたフィクションなのだから、そういう視点で読...
台湾War Game
2022
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06
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03
ウクライナ戦争
前回はロシアのウクライナ侵攻に伴って中国の動きに懸念が強まっていることを紹介した。もちろん日本だけでなく米国にとっても状況は同じで、そうした関心を受けてか、NBCがちょっと面白い取り組みをしていた。中国の台湾侵攻を想定したWar Gameを、シンクタンクの新アメリカ保障センター(CNAS)の協力で実施し、それを番組として放送したのだ。なかなか面白い取り組みなので、簡単に内容を紹介してみたい。 GameはBlue(米国...
防衛研の本
2022
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06
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02
ウクライナ戦争
ウクライナ侵攻に関し、防衛研究所が『ウクライナ戦争の衝撃』なる書物を出版した。ただこの書物、こちらのページにpdfファイルが揃っているため、その気になればネット上で読むことができる。というわけでざっと全体に目を通してみた。本文は150ページに満たない短い本であり、それほど読むのに苦労する本ではない。一方で今回の戦争に関して基本的な点はきちんと押さえられており、これまでの流れを整理して把握するには便利だ...
狩猟か採集か
2022
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06
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01
その他
ちょっと気になった話があった。農業以前に狩猟と採集のそれぞれがどのくらい重要であったかという議論だ。カロリー源としては前者が4で後者が6という比率が「概ねここ数十年の定説」だという主張で、こちらを見ても「文化人類学プロパーには常識」「(昔から)採集の重要性は既に定説であった」といった反応が多い。日本国内では、採集の方が狩猟より多くの栄養源になっていた、という考えを持っている人がけっこういるらしい...
プロフィール
desaixjp
「祖国は危機にあり」へのリンクはこちら
「終わりと始まり ―火薬革命の900年―」
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